平均寿命が長くなったのは、医学のおかげ??

精神世界

随分と昔、代替医療についての講演会をやっていたときや、少食についての講演会をしていたときに聴講生の中にお医者様がいらっしゃり、「そうはいってもEnnisさん、これだけ世界一の長寿国に日本が上り詰めたというのは、他ならない医学の進歩によるもの、安定した食事と栄養状態の向上によるものなのではありませんか?」と言われてしまって回答に窮したことがありました。しかし、どうもそこのところにはトリックが混ざっていたようなのでこちらに書いておきます。

こんなに癌で死ぬのは日本だけ

「じつは、がんの死亡数が増え続けているのは、先進国では日本だけなのです」東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏はこう断言する。日本人の平均寿命は女性が86・61歳で世界一、男性は80・21歳で第4位。その数字だけが独り歩きし、日本人は健康なのだと思いがちだが、そう考えているのは我々日本人だけのようだ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/40436?imp=0

こちらの記事に詳しいのですが、日本は先進国の中で唯一、ガン患者がいまだに増え続けているという国なのです。

背景には、欧米系の食習慣が与える発がん傾向化のインパクトが特段日本人は大きいということがありそうなのですが、こういうお話はあまり一般的には論じられていません。

平均寿命を押し下げたのは多産&乳幼児の死亡

私(Ennis)達よりも2世代ほど上の戦中・戦後世代の方々の話を聞くと分かるのですが、あの時代の方々は兄弟が5-6人というのが当たり前です。最終的に2-3人の兄弟だったとしても、戦中の栄養失調の中で亡くなったなどの話をよく聞きます。(天才バカボンの著者故赤塚不二夫さんもご兄弟の多くをそういう経緯で失っています)

乳幼児というのは基本0歳。残念ながら1歳を迎えることなく亡くなってしまった赤ちゃんたちを平均寿命を算出するための統計に入れ込むと、平均寿命はかなり押し下げられます。

医学と言うよりは栄養と衛生環境の向上

この、平均寿命を大きく押し下げるファクターである乳幼児の死亡は、栄養状態と衛生状態(主に水の清潔さ)の向上によって防ぐことができます。「上下水道の整備」と戦後の経済復興によって「乳幼児が食糧に困る」ということのなくなったことが平均寿命の延びた最大のファクターかと考えられます。

「医学のおかげ」と言うには「医学的な処置を行わなければ死んでいた」というケースがかなりの割合でなければなりませんが、確かに感染症への対抗策として抗生物質やワクチンが生み出されたのは医学の貢献に他ならないので認めざるを得ません(特に結核とか)

また、交通事故で出血している人に対して緊急の止血処置をした、というようなケースも外科の進歩、骨髄移植で一命を取り止めたというケースも医学の進歩でしょう。ただ、銃や刀が使われて傷つくというようなことは相当稀な日本で決して一般的なケースではありませんし、骨髄移植で生きながらえることになったという人の数も、何千何万人という単位でいるとは思えません。

そうなると、「平均寿命が延びたのは医学のおかげ」というのは結構無理な言説なのではないかと思います。

未病段階で防ぐことよりも「治す・対症療法」好きな日本

我々は日本人に対して結構、勤勉なイメージを持っていますが健康診断の受診率というのは先進国の中でもダントツ低いそうで、病気になるのを未然に防ぐということの大切さは軽んじられているようです。外科というのはお医者様の中でも花形です。病気⇒手術⇒生き延びる という一連の流れが目に見えて非常に分かり易くヒーロー性を帯びるからだと思いますが、本当に大切なのは「病気にならないこと」です。

ただここ、難しいですよね(笑)例えば世界が滅ぶというイベントを事前に防ぐことができた救世主というのは、最も尊いはずなのに誰からも賞賛されません。

まとめ

日本の平均寿命の向上は、食糧事情と衛生の向上の賜物だろうと思います。

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